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DC-133 Ole Børud 「Keep Movin」

2011年05月22日 23:34

Ole Børud




文化や慣習がいま急速に変わりつつある現代。産業革命とも言えるデジタル通信産業をはじめとする科学技術産業は今後も様々な習性やスタイルに変化を及ぼし、新たな価値感と概念を生み出していくことだろう。パーソナルコンピューターは軽量化やCPU速度の向上、多機能化へと突き進み、鉄道・航空産業はより高速化を目指していく。ほとんどの産業はテクノロジーの進化と切り離すことができない。そして音楽産業はデジタル通信の影響を受け、音楽データ配信ビジネスによるコンパクトディスクの音楽媒体への侵略が本格的に始まってきた。侵略は業界全体に動揺と混乱を引き起こし、さいころの目がどう出るのか、だれも予想がつかない状況に陥ってしまっている。今から25年ほど前アナログレコードはコンパクトディスクへ切り替えが始まったが、今回は当時とはどうも形相が違うようだ。

今回の変化の大きな違いの一つはマテリアルがなくなってしまったことだ。厳密にはマテリアルを所有しているが、それを質量として実感することができない。日常的に、人は質量を感じないものをマテリアルとして認識しないし実感できない。電磁波や放射線というパルスを多数受けていることを体が感じている実感がないのに似ている。息をして空気中の塵を感じ取らない。同じくして電子マネーと比べ、紙幣通貨は高額商品の購入意欲の抑止力になるという。マテリアルを感じとれないデジタル表示の数字は消費を実感し難いのだろう。マテリアルが増えれば重量も増えたが、実質のマテリアルが増えても重量が実感的に増えないし、変化しないことに違和感を覚えるのかもしれない。

新規科学技術を作り出すのは科学者やエンジニア達だが、それを普及させる決定権を持つのは彼らではない。技術の選択権があるのは消費者達である。自身もエンジニアの端くれとして日々実感することでもあるが、とかくエンジニア達は自分の技術を波及させることに生きがいを持つもので、それが彼らの仕事でもあるのだから当然のことでもあるが、新技術や先進技術は受け入れられるべきであるという驕りのようなものをエンジニア達は気持ちのどこかで持っていてもおかしくないかもしれない。どんな高度な技術革新であっても、それが普及しなければその高度技術の価値は、学術としての知見価値はあっても、少なくとも産業技術においては殆どないものとなってしまうだろう。現在の原子力発電の現状はそれを物語っている例の一つでもあろう。

デジタル音楽データ配信技術はいまマテリアルCD技術の侵食を始めたが、音楽データ配信技術の仕掛人達の思惑が実現するかどうかの選択権は消費者である我々音楽愛好家達にかかっている。我々が「No,」と言えば、この音楽ビジネススタイルは衰退せざる得ない。多くの音楽愛好家達は音楽媒体についてどういう選択をするのか気になるところではあるが、個人的な意見としては、私は断然音楽はマテリアルCD所有派である。仮に現在のCD価格の倍の価格になったとしても、音楽はCDで所有したい。

その決定的で明確な理由はまだ整理できていないが、今のところ理由の一つとしては音質があげられる。「良い音楽は良い音で聴きたい」「良い音楽は購入する」。これは世界中の音楽愛好家達の共通認識であり、音が悪いなんて言語道断である。現在ある音楽配信技術のすべてはよく知らないが、ほとんどの音楽配信技術のフォーマットであるAACやWMAやATRACは非可逆圧縮形式で音質の劣化を伴うものであるのと、これはいずれ解消されるであろうが、フォーマットとプレイヤーがうまくマッチしない場合ストレスを感じるなど、わずらわしいという問題点がある。しかし最大の理由は、やはりマテリアルという所有感覚になってくる。この所有感覚はうまく説明し難いが、栄養ドリンクを飲んでいれば食事をとらなくてもいいというような実用効果主義にも似たような味気なさ感覚を感じさせるところからくる。


近年Westcoast/AORサウンドにおいて今一番の注目のミュージシャンと言ってもいい北欧で活躍するOle Børud (オーレ・ブールード)が、ついに新作「Keep Movin」 を発表した。個人的にも、いま最もライブを見に行きたいミュージシャンの一人だ。前作「Shakin' the ground」から早3年。世界中の先物買いのAOR愛好家の間で 話題となって、半年遅れて日本でも国内盤がリリースされ話題沸騰したのも記憶に新しい。前作のクオリティーを考えれば、本作に対する彼への期待度は高まるばかりであったが、その期待度をはるかに超える良作を届けてくれた。

基本的には前作のFunk&Mellowサウンドを継承している作品になっているが、前作より低音のボリュームをそぎ落として、音が身軽になった感があり聴きやすくなった。ソウルフルで太く伸びのあるボーカルは健在で、ファンキーなベースラインに、タイトなドラミングリズム、厚いコーラス、さらにホーンセクションを十二分に活用しながら、ドライブ感満点なギターソローとスピード感のあるキーボードの電子音が左右に走り回る。一つの曲に様々な音が詰め込められて、少しオーバープロデュースの感も否めないが豊かな協奏音を聴きとることができる。本作は前作よりも全体の曲の良さが際立ち、粒のある楽曲が所狭しと配列されている。全部で11曲とスマートに極めてきた。これには非常に好感が持てる。ミュージシャンがレコード一枚に収録する曲数が少なければ少ないほど、そのミュージシャンがその作品に持っている自信の高さを示すことに他ならないと思っているが、本作はそれに該当する一品としてカウントしてもいいかもしれない。

影響を受けたミュージシャンの筆頭にはPages(ペイジス)を挙げ、その他Donald Fagen(ドナルド・フェイゲン),Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー),Gino Vannelli(ジノ・ヴァネリ), Toto(トト),Prince(プリンス), Quincy Jones(クインシー・ジョーンズ),George Duke(ジョージ・デューク)等の名前が報告されている。Mr. Mister(ミスター・ミスター),Richard Page(リチャード・ペイジ)といったPages(ペイジス)の音楽から多大な影響を受けていることを公言していることもあって、楽曲のリズムやコーラスワーク、特に流れるようなメロディーラインはPages(ペイジス)を彷彿とさせるし、どことなくRichard Page(リチャード・ペイジ)の声にも似ていなくもないような気がする。本作でいえば、「Keep Movin」,「Broken People」,「She's like no other」,「Step into my light」のような楽曲がそれに当たるのではないか。ラストの「Resting Day」ではDonald Fagen(ドナルド・フェイゲン)やSteely Dan(スティリー・ダン)を感じさせるし、「High time」,「Rock steady」では,Earth Wind&Fire(アース・ウィンド&ファイヤー)のコーラスセクションを思い出させずにはいられない。この作品では至る所で、様々な音楽要素が詰め込められていて、Ole Børud (オーレ・ブールード)の音楽的素養の守備範囲が広大であることが分かる。

それもそのはずで、彼の経歴は間違っても最近シーンに登場した新参者ではない。1976年生まれで現在34歳であるが、すでにOle Børud (オーレ・ブールード)は5歳でキャリアをスタートして以降ミュージシャンとして活動を続けてきた。そこでは各種楽器を担当し、様々なミュージシャンと多様なジャンルを渡り歩いてきた。それは、ゴスペルグループ"Arnold B Family "からメタルバンド"Extol(エキストール)"と多種多様で、Andrae Crouch.(アンドレア・クラウチ)といったミュージシャンともステージで共演した経験を持つ。こうした幅広い音楽守備範囲の強固な土台は彼の今の安定した楽曲を支えているのは間違いない。マルチプレイヤーとしての才覚も高く、作詞作曲はもちろんのこと、すべての制作指揮の主導権は自身にあった。

ハーモニーと洗練されたリズムネーションを核に、クリスタルで都会的な香りのするWestcoast/AORのグルーヴを主体として、R&Bとファンクミュージックのフレイバーを織り交ぜてくるOle Børud (オーレ・ブールード)のミュージック・カクテルは、新鮮でポジティヴな高揚感で包み込んでくれるのである。

現在のところ本作はi-tuneによるデジタル音楽配信で世界のどこからでも入手が可能で音源の入手は容易であるが、マテリアルCDの販売はCDONなどのオンラインショップにおいてもヨーロッパEU圏内のみ販売に限定的で、個人で直接入手をするのはやや困難な感じだ。正直作品のクオリティーを考えれば、然るべきレーベルからインターナショナル盤や国内盤が出てきても不思議ではないが、インディーズ輸入専門店などから今後入手ができるようになってくるかもしれない。発売されて数カ月が経過して状況が変わっているかもしれないが、どうしてもマテリアルCDが欲しい同士の方は、そのあたりを筋を探ってみるのがいいかもしれない。アメリカのオンラインオークションe-bayなどを経由して購入することもできる。







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